「あ、温かい」
「普通だろ」
「いや、なんか水風呂にでも入って頭を冷やしやがれってことかと……」
「───実はここに『凍えるチーズ』があったりするんだけど」
「しまって下さいお願いします」
「冗談だよ。この後おれも入るんだから」
「…………」
いやセンセー、目がマジでした。てゆうかその魔獣ががっくりしてるような気配がするのは気のせいですか?
てか上着も脱いで(いつもの青シャツは着てるけど)バンダナも外してるのになんでいるんだその魔獣!
「トーポ、そんなのかじってもおいしくないよ」
「お前が舐めてくれるんならオレは別にってごめんなさいすみません冗談ですよハハハ」
そんなの呼ばわりをされた指が宙を泳いで泡の中に沈む。
姐さんがお気に入りの泡風呂用の石鹸を盛大に使い切ったので、甘ったるい匂いと泡に塗れてオレの裸体を見せられないのが残念vとか言ったら華奢な腕が問答無用で湯船に沈めてくれて死にかけたけどまあそれはいいとして。
どうにもさっきからいつも以上に滑らかな舌は隠しておいた方がいい本音ってやつを曝しまくっている。
安酒にやられたのかこのシチュエーションに浮かれまくっているのか。
当初の目的の『一緒に風呂』は達成できなかったけど(できるとも思ってなかったけど)、オレがこれ以上、バカなまねをしないように見張るつもりなのか、ほんのりと暖まった石畳の上に裸足で立ったままリューイがいる(肩の上に例の魔獣もいるが)
「なに?どうかした?」
気分だけでも王様って感じ?と勝手に思ってるとふと視線を感じて。
頭だけひっくり返ってみると思ったより近くにっていうかすぐ後ろにリューイがいて。
「そんなに長くて邪魔じゃない?」
「別に」
「なんで伸ばしてるの?」
「似合うからって、痛ッ」
ゴツ。っと音がして、湯船に入りきらなかった髪が引っ張られてそのまま頭を打ったオレの、少しだけ滲んだ視界に飛び込んできたのは、なんというか。
「なにその、練金で失敗した。みたいな顔は」
「あれって変なのできると凹むよね」
「凹んでらっしゃるんで?」
「うん。たぶん、ってゆうか」
濡れて額に張り付いた前髪をリューイの指がさらう。
「やっぱり兄弟だよねー」
「……どこ見て言ってんの」
「ここ」
ペチ。っと軽すぎる音を立ててリューイの手が離れる。
「なに?ご機嫌ですか?」
オレはあんまりご機嫌じゃなくなりましたが。
「たぶん」
「……それは良かったですねお兄さんも嬉しいですよ」
「誰がお兄さん?」
「目の前にいるでしょ」
「いるのは酔っぱらい」
「もう酔ってないって」
「……酔っぱらいはみんなそう言うんだ」
やけに実感のこもった声に思わず笑う。
「笑うな」
「や、ごめん」
いやもうだってさ、そーいう場面が易々と想像できて。
なんだろうね。なんでこう、
「酔い醒めたから一緒に入ろ」
←back
next→
・top
・novel
・home