「無理」

 即答ですか。っていうか意味、わかってないだろうね、やっぱり。

「じゃあ温泉!温泉だったらいいだろ!?」
「……おんせんって何?」
「でっかい天然の風呂だよ」
「…………どこにあるの?」
「え?マジ一緒に入ってくれんの!?」
「いやそれは別でなんか見てみたいかな。って」
「おっし!じゃあ探しに行こうぜ!」
「は?いやちょっと待って、今は───」
「ああうんだから全部終わったら」
「…………」
「杖見つけて王様と姫様の呪いを解いたら」
「…………」
「その後に、」
「…………」
「ちょっと世界を一周するくらいの時間は、」
「…………」
「───オレにくれない?」
「…………」
「もちろん三食添い寝お前付で」
「……………………」

 一世一代の、酒の勢いがなけりゃ言えない、大告白。なんだけど。
 これからもずっと言い続けるけれど。
 さあどうする?
 その、夜みたいな闇色の目にオレは入ってる?
 空みたいにひろい心にオレの入る処はある?
 なあ、お前の一番になろうなんて思っちゃいないけど。
 特別くらいにはしてくれんの?
 ほんの少しの間でいいから。

「……三食添い寝は嫌だよ。お前、寝相悪いし」
「じゃあ決まりな!全部終わったらこんぜ……慰安旅行ってことで!のんびりまったりしんこ……温泉!」
「……慰安旅行ってことはみんな揃ってことだよね。じゃあいいよ、行こうか、温泉」
「なんだそのあからさまにほっとした顔は」
「でもさすがに陛下と姫は無理だよね……」
「聴いてますかー」
「トロデーン領内にないかなー温泉」
「おーい」
「あとで陛下に訊いてみよう。うん。なあ温泉って国益にもなる?」
「なる。じゃあなくていやなるけど!たぶん!ってどこ行くんだお前!」
「そろそろ上がってよ。おれもそろそろ眠くなってきた……」
「いやだから最初っから一緒に入ろ───」
「何か言った?」
「いえ。早急にちゃちゃちゃっとあがりますよ。だからしまって下さい、その魔獣」
「饅頭なんか持ってないよ」
「…………」

 わざとか本気か天然か計算か天然か天然だろって見せかけて意外とそーでもなかったりするんだよなってでもとか無駄に迷ってる間にあっさりと消えた背中に。

(やー、まー、いいか。とりあえず)

 つい伸ばした腕を戻す。
 逆上せたのか冷めたのかよくわからない頭がやけにごちゃごちゃしてるけど。

《じゃあいいよ》

 忘れんなよリューイ。

《行こうか》

(オレ達はまだ何もはじめちゃいないんだからな)


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