「だいたい何で武器置いて行くんだよ」
背中に大きな剣を背負っていればそういった勘違い野郎に遭遇する事もなかったかもしれないのに。
「……モンスターも出ないのに武器なんかいらないだろ?」
「モンスターより危険な奴らがいっぱいだから、ゼシカを表に出さなかったんだろうが」
「……そんなの、武器なんかなくてもどうにかなるよ」
「…………」
「だったらなんでさっきの奴らにも一撃必殺の『正拳突き』とか問答無用で『爆烈拳』とかそのポケットの中の刺客を解き放ってやらないんだよ!」
「人に向かって『正拳突き』とか『ライデイン』とかするなって言ったのはククールじゃないか!」
「そりゃオレにするなってことであーゆう不逞の輩にはガンガンやっちまえってこのバカ。だいたい、いまの、貞操の危機だったってことに気づいてんのかお子様!」
「あ、チーズが入ってる。トーポ食べる?」
「まてこらいますぐその魔獣をポケットにしまえ」
「ただのチーズだよ?」
「威力の強弱以前にオレに向かってやるな。と言っているんだが」
「だって不逞の輩なんでしょ?」
「俺の真摯な愛情と下世話な好奇心を一緒にするな」
「やることは同じじゃないか」
「オレはまだやってない!」
ワン。
「…………」
「…………」
「……さっきから何をやっておるんじゃ」
気がつけばすでに街の入り口の門を抜けていたらしく。
野良のわりには行儀良くお座りして尻尾を振っている犬と、馬車からひょっこりと顔を出した王様が───なぜ王様が人目を忍ぶようにひっそりと馬車で寝起きしているのかは諸々の事情があるのだが───あきれたような表情で二人を見ていた。
V
「すみません、宿の人に夕食を分けてもらったんです。少し冷めちゃったけど、これ……」
「おお〜さすがはリューイじゃ!」
「…………」
宿から大事そうに抱えていた袋を渡しながら、リューイが笑う。
その様子に。
(……王様にまでジェラシーかよ)
思わず仰いだ天には星が瞬いていて。
「どうしたの?」
「……何が?」
「めずらしく真面目な顔して」
「いい男だろ?」
「…………」
軽く流されるかあっさり無視されるか笑顔でトドメをさされるか。
悲しいかな、条件反射で心持ち身構えて。
(あれ?)
「───なに?」
見下ろす視線の先にはなぜか滅多にない真剣な表情のリューイがいて。
「なんかくやしい」
「は?」
「おれもっと強くなるから」
「……いや、それ以上、強くなられると本気で教会の世話になるはめに───」
「戻ろう」
「おいだから待てって!」
(わからん。やっぱりわかんねーはこいつ。くやしいってのは女に間違われてくやしいってことか?オレが男前でジェラシーって……まさかなーでもなー)
足早に通り過ぎた、その表情は。
「なあ、リューイ」
暗かったとはいえ、確かに。
「やっぱり、お前、可愛いわ」
「!」
腕を引き寄せ、その赤い耳元に囁けば。
「ライデイン!」
さらに真っ赤になった顔でもはや馴染みとなった呪文を放つ。
「可愛いって言うな!」
(……いやだからそういう反応が可愛いんだって……)
雷光に貫かれ、地に伏したまま、辛うじて残された気力のみで回復呪文を唱える。
染み込むように四肢に流れ込んできた熱量に、起き上がって追いかけるか否かをわずかに思案して。
(……でもまああれだな、これで今日の『反撃ポイント』はゼロになったはずだから、戻ったら一緒に風呂入ろうぜvって言ってももう体力削られねえよな……)
闇に煌めく星々の下でだらしなく寝転んだまま、砂の混じった風に目を閉じた。
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