こたつと鍋と酔っぱらい:03
「……なにやってんだ?」
「どうした?カレーはないぞ」
「ないのか?」
「そうだ」
「……そうか」
───俺が勝手に脳内でお父さんに秘拳を食らってる間に、父と子はなにやら微笑ましい会話をって何を言ってるんだ俺は。
「甲太郎?」
「ん」
今俺の頭の中で「カレーと結婚する」と断言した男が、とろんとした目で俺を見る。やっべぇ。現実の方が夢じゃないかっていうくらい可愛い。じゃなくて、眠っていたはずの甲太郎がむくりと起きてカレーがないことに落ち込んでるじゃなくてやっぱり言動がどこか幼いのは眠いのと酔っぱらってるのと両方だろう。
酒が入ると無駄に可愛らしくなるのは最終兵器以外の何ものでもないのでというか俺以外には、たとえ龍麻さんであっても見せたくはないのでもう一度眠らせようかと思ったところに玲瓏とした声が落ちた。
「───なあ甲太郎」
「?」
「例えばの話だが」
「うん」
「俺とカレー、どちらか一方しか助けられないという状況に陥った時、お前ならどっちを助ける?」
酔ってるのか。
この人も酔ってるのか!?
というかカレー○ンマンは助ける方だろう!(最終的にはアンパ○マンに助けられたりするんだが)
「カレー」
ああやっぱり。わかってても何か切ないぞカレーパ○マン!
「なら京一とカレー」
「カレー」
ぐだぐだだ。
酔っぱらいを止められる酔っぱらいはいない。
ならばすっぱり諦めて、甲太郎の可愛さを堪能しようと隣りに視線をやる。
ふだんもどこか眠たげな雰囲気なのに酔っぱらっただけでここまで可愛くなるのはなんでだろうとやっぱり酔っぱらってる俺が真剣に考えてると、
「なら俺と九龍なら?」
え?
「九ちゃん」
ええ?
「京一と九龍」
「九ちゃん」
いつも皮肉まじりにしか呼ばれないそれが、舌ったらずな声音で呼ばれるだけでこうまでかわるのか。
酔っぱらい万歳。酒って偉大だ。ありがとう神様。てゆーか誰だよこれと醒めはじめた俺の理性引っ込め。よし引っ込んだ。
「ならカレーと九龍なら?」
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