「こ、」
「青───お前がついていながらなんでこのガキはここまで入り込んでるんだ?」
「だ、」
「……ええっとごめんなさい」
「甲っ」
「“甲太郎さん”だ。ら・い・と・ぼ・っ・ちゃ・ま」
「うっ」
「……それぐらいにしてあげたら?」
一応それなりに反省はしているようだし。っていうか死相が出始めてるよ。
と、皆守の足の下でもがいている赤毛の少年を見ながら、壁際で大人しく、けれど何かあればすぐ助けにいける姿勢で立っていた少年───黒髪黒眼の皆守の養い子───青がやんわりと保護者に告げる。
「このくらいでくたばってるようなら、《宝探し屋》なんざ100年経っても無理だ」
しかしその保護者はあっさりと切り捨てようやく一息ついたとでもいうようにポケットから銀色のパイプを取り出し火をつける。
「……アロマがうまいぜ」
「くっ、てめっ」
足の下の赤毛少年が長めの前髪の間から青い目で睨みつけてきたが、その程度で怯むような皆守ではない。
本当に。誰に似たのか。母親と同じ色の髪と父親と同じ色の目を持つ少年はしかし、性格はその両親のどちらにも似ておらずむしろ───。
(どうしてあいつはいてもいなくても面倒事を起こすんだ)
浮かんだ男の───能天気すぎる顔を即座に消して、皆守は往生際悪く足掻く少年を冷ややかに見下ろす。
あの男はああ見えて一応その道のプロだった。たとえ目算を誤り敵のど真ん中で弾切れになっても、最後の最後で罠の解除に失敗して発動させても───結局、どうにかしてしまった。生き残った。それはあの男が、その術を知っていたからだ。
だが。
「何か言ったか?坊ちゃま」
「ぼ、坊ちゃま言うなっ!」
「ここには入るなって言ったよな?」
「……」
「言ったよな?」
「……」
「言・っ・た・よ・な?」
「……言いました」
「お前も、入らないって言ったよな?」
「い、言いました」
「───なら、お前が今するべき事は何だ?」
「……」
「……なにか、言う事があるんじゃないのか?」
「……ご、」
「……」
「ごめんなさい」
「……」
「……」
「……」
「……すみませんでした」
「……」
「……」
「……」
「もうしませんっ!!」
「……あー、眠い」
「って聞いてねーのかよっ!!」
「どうやらまだ反省し足りないようだな」
「いた、ちょ、ま、ご、ごめんなさいすみませんもうしませんから許して下さいっ!!」
「───根性なしめ」
ほんの少し力を入れただけで鍛えられていない身体は簡単に悲鳴を上げる。
大人も子供も関係なく。
人は簡単に死ぬ。
けれど。
「くっそーなんだって俺がこんな……」
それは。
「何か言ったか?」
(知らなくてもいいことだ)
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